① 令和8年度税制改正で暗号資産の分離課税化(税率20.315%)が決定(2028年1月適用見込み)
② 2027年分の申告まではまだ旧制度(雑所得・最大55%)が適用される
③ 2027年以前に確定した損失は分離課税の損益繰越に使えない点に注意④ DeFi・NFT・海外取引所は分離課税の対象外となる可能性がある
日本国内の暗号資産口座数は2025年10月時点で1,300万口座を超え、2022年比でおよそ2倍以上に増加しています(暗号資産交換業協会の公表データより)。ビットコインETFが米国で承認され(2024年1月)、機関投資家の参入が続く中、個人投資家の暗号資産への関心はますます高まっています。
しかしこれまで、日本の暗号資産税制は国際的に見ても「重税」として知られていました。株式や投資信託の利益には一律20.315%の税率が適用されるのに対し、暗号資産の利益は「雑所得」として給与などと合算する「総合課税」の対象となり、所得税と住民税を合わせると最大55%が課される仕組みだったからです。
2025年12月19日、令和8年度税制改正大綱の公表でこの状況が大きく変わることになりました。日本経済新聞が「仮想通貨所得、20%分離課税に」と報道し、暗号資産業界に大きな転機が訪れました。
現行制度では、暗号資産を売却または他の暗号資産と交換した際に生じた利益は「雑所得」に分類されます。雑所得は給与収入や事業収入などと合算して税率を計算する「総合課税」の対象です。
総合課税では所得が多いほど税率が上がる「累進課税」が適用されます。住民税10%を加えると、所得税の最高税率45%との合計で最大55%の税率となります。
総合課税(現行)の税率早見表
例えば年間1億円の利益が出た場合、現行制度では税金が5,000万円を超えるケースがあります。これが新制度では一律約2,031万円(20.315%)となる見込みです。
現行制度では、同じ年に複数の暗号資産取引があった場合、年間での損益通算は可能です(雑所得の範囲内)。しかし、その年に使い切れなかった損失を翌年以降に繰り越す「損失繰越控除」は認められていません。
株式投資であれば損失を3年間繰り越せるため、暗号資産投資家が不公平に感じる大きな要因となっていました。
2025年12月19日公表の令和8年度税制改正大綱、および令和8年3月31日に成立した改正所得税法により、暗号資産から生じる所得を「申告分離課税」の対象とすることが正式に決定しました。
改正後の主要ポイント
【重要】分離課税の適用開始は「金融商品取引法(金商法)改正の施行日の属する年の翌年1月1日」と規定されています。金商法改正が2026年通常国会で成立・2027年中に施行された場合、分離課税の適用は2028年1月1日以降となります。つまり2026年・2027年の取引には現行の雑所得・最大55%の税率が引き続き適用されます。
分離課税の対象となるのは「特定暗号資産」に限定される見込みです。具体的には国内の暗号資産交換業者(金融庁登録の取引所)で取り扱われている銘柄が対象となり、ビットコイン・イーサリアムなど主要銘柄は含まれる見込みです。
一方、以下のケースは分離課税の対象外(引き続き総合課税・最大55%)となる可能性があります:
「草コイン」と呼ばれるマイナーな通貨や海外DEXでの取引が特定暗号資産に含まれるかは、今後の詳細制度設計(政令等)を待つ必要があります。
現在、特定暗号資産に含み益がある場合、2028年1月以降の分離課税施行後に売却することで、最大55%から20.315%へと大幅な節税が期待できます。ただし以下のリスクには注意が必要です:
重要な落とし穴:2027年以前(現行の総合課税下)に確定した損失は、2028年以降の分離課税の利益と相殺することができません。損失繰越控除は「分離課税の適用開始後に確定した損失」に限られるためです。2027年中に損失を確定させても、それを2028年の分離課税利益と相殺することはできない点を必ず理解しておきましょう。
2026年・2027年分の暗号資産の利益は現行通り「雑所得(総合課税)」として確定申告が必要です。申告が漏れると無申告加算税・延滞税が課されます。取引履歴は取引所のCSVエクスポートで管理し、毎年漏れなく申告することが重要です。
暗号資産は以下のタイミングで課税関係が生じます:
「ビットコインを買ったまま保有しているだけ」の状態では課税されません。あくまで「利益が確定した時点」で申告義務が生じます。
複数回に分けて購入した暗号資産の取得価額は「移動平均法」または「総平均法」のどちらかを採用します(選択制)。一度選択した方法は継続適用が原則です。法人の場合は原則として移動平均法が採用されます。
はい、国内外を問わずすべての取引所での損益を合算して申告します。取引履歴を各取引所からダウンロードし、全体での損益を計算する必要があります。
NFTの売買で生じた利益は現行制度では「雑所得(総合課税)」が原則です。ただしNFTの販売が事業として行われている場合は「事業所得」となる可能性があります。2028年以降の分離課税の対象にNFTが含まれるかどうかは今後の政令で明確化される予定です。
ステーキング報酬・DeFiの流動性提供によるリターン等は現時点では「雑所得(その他)」として申告するのが一般的な取り扱いです。ただし個々の取引の性質によって判断が変わる場合があり、金額が大きい場合は専門家への相談を強くお勧めします。
暗号資産は相続税の課税対象です。評価方法は原則として「相続開始日(被相続人の死亡日)の終値」で評価します。株式のように複数の評価方法から最低額を選ぶ制度がなく、一時点の価格で評価されるため価格変動が大きい暗号資産では納税額が予測しにくい点に注意が必要です。
損失のみの年は申告義務がない場合が多いですが、住民税の申告が必要な場合があります(各市区町村に確認)。また、同一年内に利益が出た他の雑所得(副業収入等)との損益通算を行う場合は申告が必要です。
令和8年度税制改正により、暗号資産の税制は2028年を境に大きく変わります。
取引が複雑な方・大きな利益が出ている方は、税制移行期の今こそ専門家への相談が重要です。
暗号資産の確定申告・節税対策についてお気軽にご相談ください。取引履歴の整理・損益計算から申告書作成まで、専門税理士がサポートします。→ まずは無料相談から
※本記事は令和8年度税制改正大綱(2025年12月19日公表)・改正所得税法(令和8年3月31日成立)等の公開情報に基づき作成しています。
金商法改正の審議状況により適用時期が変わる可能性があります。最新情報は必ず税理士または国税庁公式サイトでご確認ください。